まみがおか内科 院長 北出です。
前のブログでも言及しましたように、この項では、現在急増しているCOVID-19感染(変異株を含む)に対して、今できる感染対策について考えていきます。
まず、今までの復習として、COVID-19感染の契機について再確認します。
感染経路の主たるものは飛沫感染。他に手に付いたウイルスが何かの拍子に口腔、気道に入って感染する接触感染の可能性もあり。空気感染に関しては明らかな証拠が無いが、やはり換気ができる環境が望ましいと考えられている。
飛沫感染を起こしやすい状況は以下の通り。
A、いわゆる3密(密閉、密集、密接)。換気が不十分になる屋内で、大人数の他人が存在し、近い距離で一定時間以上接する状況
B、大声を出して会話する、歌を歌う(飛沫量が増えるため)
C、何らかの理由でマスクを外す時間ができる(飛沫を出す、飛沫を受ける、両面において著しくリスクが増える)
これら3つの因子が重なるほどに感染リスクが増える事が分かっています。要約すると、
3密(複数の他人が集まった場合、人数に関わらず密集、密接と判断して良いと思われます)状況下で大声を出したり、マスクを外さざるを得ないような状況を作ってしまう事が感染の主要因と考えられます。
以上を踏まえて、今までは主に以下の対策が取られてきました。
1、飛沫感染を避けるために、家の外ではマスクを常時着用し、他人が近くにいる場合はマスクを外さない。鼻マスク(口だけマスクで覆い、鼻を覆わない)は行わない。
2、飛沫感染のリスクが高い行為を行わない。
行為の特定に関しては本項では避けますが、参照として米国感染者学会が公表した行動リスクの分類を抜粋して示します。下のリンクをクリックしていただけると閲覧できます。米国ならではの行動リストが混じっていますが、適宜参照ください。
3、接触感染を避けるために、建物やお店に入る前後、他人と会う前後にアルコールで手指消毒を必ず行う。機会があるたびに石鹸で手を洗う。ウイルスが付着しているかもしれないマスクはみだりに触らない。マスクを外したら手指消毒を併せて行う。
さて、変異株の感染割合が急増し、感染患者数も急増しており、今まで以上に感染リスクが高いと思われる現在、上記の感染対策に加えて何に気をつけていけば良いのでしょうか?
今回京阪神+奈良で増加している変異株は英国型と報告されています。このため、昨年末に英国で変異株が蔓延した際の経過が参考になると思われます。
英国では年末にN501Y変異株の急増が報告されて以来、年始から今に至るまで長期のロックダウンが行われ、また4/5時点で人口の47%にあたる3162万人がワクチン接種を受けることにより、1日の感染者数が60000人から2000人台まで減少しています。この事から、従来の感染対策を強化しながらワクチンの接種率を上げる事は変異株に関しても有効な対策であることが示唆されます。
大阪府知事の発表では、変異株感染は従来株より感染力が高く、また50歳以下の感染者の重症化率が高くなる事が報告されています。一方海外のデータでは、確かに感染力が増える(最大1.7倍)ものの、若年者の重症化リスクに関しては有意な報告は見当たらない状況です。
これらの情報を考慮すると、以下のことが推察されます。
1、英国型変異株感染が増加することによって、今までよりも感染リスクや重症化リスクが上がっている可能性がある
2、若年者の感染報告が増えているが、これは単に変異株だけの影響ではなく、春休みに出歩いたりして感染対策のガードが下がっていた影響もあるかもしれない
3、変異株感染から身を守るために、新しい良い防御策は見つかっていない。ただし、今までの感染対策を強化する事は有効であると思われる。併せてワクチン接種が広まることで、より感染対策が進むことが期待できる
これからゴールデンウィークも控える状況ですが、上記の高リスク行為はもちろんの事、中リスクに当てはまる行為にも十分に気を遣い、少なくとも感染者数が減少に転じるまでは個人個人が感染対策を徹底する必要があります。また、学生さんと思われる若年者の感染数が増えていますので、お子さんの体調管理にも十分にご留意いただき、発熱・感染症状がある場合は早期の検査をご検討いただければと存じます。