奈良県北葛城郡の内科・消化器内科・肝臓内科・糖尿病代謝内科『まみがおか内科』です。

2型糖尿病

当院での2型糖尿病の治療方針

3つのポイント

  1. 患者様の減量サポートが根本的な改善のために一番重要と考えています。
  2. できる限り注射→内服、内服→減量、中止を目指せるように努めます。
  3. 糖尿病による合併症や発癌のリスク管理をお手伝いいたします。

はじめに

日本糖尿病学会のガイドラインでは、糖尿病治療の目標として、

  • 最低限「合併症予防を目指した7.0%未満」を目標とする
  • さらに可能な場合は「血糖正常化を目指した6.0%未満」を目標とする

ことが挙げられています。当院でもこのガイドラインに沿った治療を行っていきます(1)。

ただし、65歳以上の高齢者の場合は、厳格すぎる血糖コントロールにこだわりすぎると、逆に低血糖による事故や合併症を招くリスクがありますので、「高齢者糖尿病診療ガイドライン」を参考にした上で、患者様の病状や社会的背景などをしっかり把握したうえで、お一人お一人に適応した緩やかな目標を設定する場合もあります(2)。

*当院では2型糖尿病を主に診察させていただきます。1型糖尿病に関しては、より専門的なインスリン注射管理が必要な場合が多く、原則として診断がつき次第、近隣の糖尿病専門医に紹介させていただいております。

①生活習慣の改善によって、減量をサポートします

当院では、食事・運動療法に基づく体重の減少(減量)が2型糖尿病の治療ゴールに向けての1番の近道であると考えています。糖尿病が発症する原因の主なものとして、肥満(メタボリックシンドローム)によって内臓脂肪が増えることにより、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きめが悪くなることが分かっています。内臓脂肪は減量にともなって比較的スムーズに減ることが知られていますので、たとえ数kgでも、減量することによって明確にHbA1cが減ってくることが実感いただけるケースが多いです。実際、海外の研究では、体重の5%以上の減量に成功することで、かなりの割合の患者さんのHbA1cが劇的に改善する可能性があることが示されています(3)。別の研究では、10kg以上の減量に成功した2型糖尿病患者様の64%が、その後少なくとも2年間、血糖値の正常化を持続できたことが報告されています(4)。従って、2型糖尿病をしっかりコントロールするためには、お薬をどのように工夫するかという事よりも、どのように体重(内臓脂肪)を減らしていくかという要素が重要だと考えています。

当院では以下の点に気をつけて指導させていただいております。

  • 1日の目標カロリー摂取量を設定し、必要であれば栄養指導を行います。
  • 栄養バランスに無理がない範囲で糖質摂取の制限を推奨し、食後血糖の上昇を抑えるよう指導します。
  • 適切な蛋白質摂取量、適切な運動を行い、筋肉量を減らさないよう指導します。

患者様からのご質問のうち、特に多いのが、近年流行している厳格な糖質制限に関してです。この点に関しては正直賛否がはっきりと分かれるところであり、未だに正解が出ていないところですが、当院は以下の意見です。

  • 2型糖尿病患者さん、インスリンが比較的分泌されている、肝腎機能が保たれている場合において、半年以内の施行に関しては非常に有効です。
  • 長期(半年以上)にわたって行う場合、現時点では安全性を担保できる証拠が十分集まっていないため、途中からカロリー摂取量を一定に保ったまま、緩やかな糖質制限の食事に切り替えて絶対にリバウンドさせない方向に転換した方が安全かと思われます。
②生活習慣の改善によって、治療薬の減量を目指します

当院では、患者様の生活習慣を改善し、減量に成功することによって、2型糖尿病患者様の内服薬や注射薬の可能な限りの減量(できれば中止)を常に目指しております。また、状況が許す限り、インスリンやGLP-1などの注射薬の使用を後回しにしています。今まで注射薬で治療されていた患者様についても、改めてその必要性を評価し直し、可能な場合は減量や内服薬への切り替えに努めています。

経験上、特に肥満の患者様においては、一定期間内に集中的に減量を成功させ、その後リバウンドなく経過できた場合、多くの場合劇的なHbA1cの改善、お薬の減量〜場合によっては中止、もしくは注射薬から内服薬への変更を達成できた方を多数経験しております。

③糖尿病による合併症や発癌のリスク管理

糖尿病合併症として、網膜症、腎症、神経障害、動脈硬化症などは以前から有名であり、合併症予防策もHbA1c<7.0%と比較的はっきりとしています。当院では定期的な腎症、神経障害、動脈硬化症の評価を併せて行うとともに、近隣の眼科への適時紹介を行うことにより、これらの合併症への定期観察を欠かさないよう努めてまいります。

一方、近年の日本人糖尿病患者さんの死因の1番は悪性腫瘍であり、38.3%と高率です。実際、糖尿病患者さんでの膵臓癌のリスクは1.85倍、肝臓癌のリスクは1.97倍、大腸癌のリスクは1.4倍に上がることが報告されています。また、肝臓癌が12.2%、肝硬変の死因が5.3%であり、併せると肝臓病が死因となるものが約18%に観察されており、糖尿病と肝臓病の親密な関係が示されています(5)。これらの事実からは、糖尿病患者さんにおいて、定期的な癌検診と肝機能検査が必要であることが分かります。

糖尿病に合併する肝疾患として必ずチェックしないといけないのが脂肪性肝疾患(NAFLD; non-alcoholic steatohepatitis)です。以前から脂肪肝として馴染みの深い疾患ですが、昨今のメタボリックシンドロームの増加にともなって急増し、近年は国内で数千万人の患者さんがいると推定されています。脂肪肝は元来予後良好な疾患とされていましたが、そのなかで約10%が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という進行性の病態へと進展し、最終的に肝硬変や肝細胞癌へと至りうることが明らかになってきております。また、糖尿病患者が脂肪肝を発症した場合、かなり高い確率でNASHに進展することが様々な研究で示されており、糖尿病患者さんにおいて脂肪肝は既知の合併症に並んで対処が必要な重要な疾患となっております(6)。

当院では、定期的に肝機能検査と超音波検査を行い、2型糖尿病患者さんの肝臓や膵臓における問題検索を行なってまいります。また、その他の癌(大腸、肺、胃など)に関しては、患者さんお一人お一人の生活習慣や環境リスクを考慮して、その都度適切な検査を手配させていただきます。

糖尿病治療薬に関して

昨今、糖尿病治療の進展によって、様々な種類の治療薬が使用できるようになっております。紙面の都合上、各薬剤の詳細な紹介は困難ですので、当院での治療方針を概略で示させていただきます。

  • 糖尿病と初めて診断された場合、まず2−3ヶ月は食事・運動療法を行い、血糖コントロールが可能か判断します。食事・運動療法のみで血糖コントロールが目標に達する場合は、定期観察を行なっていきます。
    • 食事療法に関しては、まず3%の体重減少を目指します。
    • 運動療法に関しては、週5回以上、1回30−60分の、無理ない範囲での有酸素運動を推奨します。
  • 食事・運動療法で十分な血糖コントロールができない場合(HbA1c≧7)、もしくは初診時に血糖が非常に高い場合(空腹時>250mg/dl, 食後>350mg/dl)の場合は、内服での薬物治療を開始します。原則1種類の薬剤を開始し、治療目標(HbA1c<7)に達しない場合、最大3種類までの薬剤を追加します。
  • 上記にて治療目標に達しない場合は、注射製剤(GLPー1作動薬やインスリン)を内服薬に併用します。コントロールが困難な場合は専門医に紹介させていただく場合があります。

(1)糖尿病治療ガイドライン 2019
(2)https://www.cdej.gr.jp/uploads/files/information/高齢者の血糖コントロール目標.pdf#search=%27糖尿病+治療目標%27
(3)https://www.ncl.ac.uk/magres/research/diabetes/reversal/#publicinformation
(4)https://www.diabetes.org.uk/about_us/news/eight-loss-type-2-diabetes-remission-direct-latest
(5)日本糖尿病学会「糖尿病の死因に関する委員会」
(6)NAFLD/NASH診療ガイドライン2014

診療時間
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15:30~18:30(受付 15:30~18:00)

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