奈良県北葛城郡の内科・消化器内科・肝臓内科・糖尿病代謝内科『まみがおか内科』です。

肥満症

当院での肥満症の治療方針

1、肥満と肥満症、メタボリックシンドローム

近年、食事様式の欧米化や運動量の低下を原因として、日本人の肥満率が顕著に増加しています。また、21世期に入ってから、肥満が様々な疾患と深く関連しているメカニズムが解明されはじめ、特に肥満に関連した生活習慣病であるメタボリックシンドロームの研究が進んできております。

肥満の判定基準としては、以前からBMI(Body mass index)という数値を用いており、これは今でも変わりません。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算できますが、25以上で肥満、35以上で高度肥満と診断されます。肥満と診断される方の中で、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの肥満と関連した疾患をお持ちの方を肥満症と診断し、医学的な治療適応となります。

肥満=(中性)脂肪が体内に蓄積した状況と言い換えることができますが、中性脂肪がどこに蓄積するかで疾患への寄与度が大きく異なります。具体的にはメタボリックシンドロームにあまり寄与しない皮下脂肪と、大きく寄与してしまう内臓脂肪に大きく分かれます。内臓脂肪型肥満の患者さんの場合、皮下脂肪型肥満の患者さんと比較してより高確率でメタボリックシンドロームやその周辺疾患を併発(=肥満症)すると理解していただいて差し支えないと考えています。

内臓脂肪の蓄積量を概算する場合、CTでお臍のレベルの断面写真でどれくらい腹膜の内側に脂肪が付いているかを計算します。このため、ウエストサイズを計測することで、内臓脂肪型肥満の有無を比較的簡単に見分けることができます。男性の場合ウエスト≧85cm、女性の場合≧90cmが内臓脂肪型肥満の診断基準となります。これは、メタボリックシンドロームの診断基準にもぴったり当てはまりますので、ウエストサイズの把握は非常に重要となります。

内臓脂肪の蓄積と年齢に関しては、男女間で大きな差があります。男性の場合、20-30代から内臓脂肪量が増加していくのに対して、女性の場合は閉経を迎えた50歳ごろから急激に内臓脂肪の増加がみられる事が特徴的です。

内臓脂肪型肥満(〜メタボリックシンドローム)にと関連が深く併発する症状を下にまとめました。言い換えますと、これらの症状を指摘された患者さんは、まずは内臓脂肪型肥満の改善を目指すことにより、病状の改善がおおいに期待できます。具体的には、肥満症の患者さん(BMI≧ 25)の場合体重の3%分減量、高度肥満症の患者さん(BMI≧35)の場合体重の5%分減量によって概ね一定の健康効果が得られるとされています。これを延長させていって最終的にはBMI<25を維持することがゴールとなります(1)。

2、減量にあたって必ず心がけるべき大事なポイント

減量するための絶対的な法則として、飲食で摂取するカロリーが基礎代謝や運動、仕事で消費するカロリーを下回る事が必要です。この法則を塗り替えて楽に減量できるお薬やサプリメントは現実的に存在しないか、使用可能な状況がかなり限定されてきます(お薬やサプリの詳細に関しては、3)を参照ください)。結局は、食事の量を制限して運動量を増やす事が必要になってくるわけです。

以下が大事なポイントになります。それぞれの詳細に関しては、次章3)をご参照ください。

①減量に対して本気になれない。

経験上、ほとんどの場合、ご自身に健康被害が無い、もしくは軽症か無症状のために切迫感が無い事が原因かと思われます。メタボリックシンドロームを発症していない方の場合、確かに先行投資的に減量を開始する事(当然有用な先行投資ですが)に強いモチベーションが生じないのはよく理解できます。反面、既にメタボリックシンドロームを発症しておられる肥満症の方に関しては、この時点で強い意識改革が必要です。なぜなら、以下の事が分かっているからです

  • メタボリックシンドロームは減量しないと根本的解決を得られない
  • メタボリックシンドロームは減量しないと無症状のまま病状が進行する
  • メタボリックシンドロームで進行した病状は、多くの場合後になって取り返しがつかない変化となる(例えば動脈硬化や糖尿病の合併症は、多くの場合正常化困難です)

メタボリックシンドロームが進行すると、動脈硬化→脳梗塞や脳出血、心筋梗塞の主要因になったり、糖尿病合併症による寿命減少が危惧されます。このことから、少なくともメタボリックシンドロームと診断された時点からBMI<25を目指して減量を開始することで、あなたの健康寿命に寄与する可能性が非常に高いという事が言えます。

②減量と言っても、何をどうすればいいか分からない。

明確な指示・指標のない減量は、例えば地図を持たずに旅行するようなもので、不安も感じるし意欲も湧きにくいのが当たり前だと思います。詳細に関しては後述を参照いただければと思いますが、大事なのは以下の点です。

  • 自分が1日に何カロリー摂取すればいいのか分からない
  • 何をどれくらい食べたら目標カロリーに達するのか分からない
  • 運動をどれくらい行えばいいのか分からない

これらに関して、3)で各ポイントを解説していますので、そちらを参照の上、必ずご自身の必要カロリー、毎食の摂取カロリー、運動必要量を把握した状態で減量を開始してください。

③どれくらいの期間続けないといけないか不安。リバウンドしそうで不安。

減量において、リバウンドするという事が最大の問題であることは言うまでもないかと思います。最近流行している糖質(炭水化物)制限ダイエットのように、短期間集中運用で有効的に減量できるダイエット法の場合、そのダイエット法を止めた途端にリバウンドするリスクがあります。ポイントは、ダイエットを短期間で切り上げるとリバウンドするという点です。過去の臨床研究では、短期的に減量効果が得られても、1年後にはその半数でリバウンドする一方、長期間継続したダイエット指導の場合、リバウンドの可能性が明瞭に低くなる事が報告されています(2)。

そもそも、肥満=体にとって不適切な生活習慣によるもの=生活習慣病の一環であるわけですので、ご自身が選択された減量法におけるカロリー摂取量や運動量をある程度長期間しっかり続けていき、ご自身の新しい生活習慣として上書き保存されるまで続けることで、はじめてリバウンドのリスクが少ない減量が達成できると考えています。減量法の詳細に関しては、3)で説明させていただきます。

3、当院での減量指導の方法

前の章でも触れましたが、減量するための絶対的な法則として、飲食で摂取するカロリーが基礎代謝や運動、仕事で消費するカロリーを下回る事が必要です。さらに、リバウンドを防ぐために長期計画を立てて減量に立ち向かい、今までの生活習慣を上書き保存する事が必要となります。以下の順番で、まずはしっかりとした目標値を設定しましょう。なお、目標体重や目標摂取カロリーに関しては、肥満症診断ガイドライン2016に準拠した形で指導目標を立てさせていただいております。

①あなたの目標体重と減量目標を設定します。

BMIが18〜25が標準体重の範囲とされています。BMIの至適な目標値はお一人お一人異なるかと思われますが、概ね全ての方で、目標体重=BMI 22となる数値(統計上、日本人で最も長寿が見込める体重となります)で設定することをお勧めしています。従って以下の式で目標体重が計算できます。

目標体重(kg)=身長(m)x身長(m)x 22

例えば身長170cmの方ですと、目標体重は1.7×1.7×22=63.6kg
この目標体重を長期的なゴールとして、減量指導を行なっていきます。

上で申し上げた通り、減量の最終目標は長期間掛けて体重を正常化+生活習慣の上書き保存する事なのですが、長期間減量を続けるためにはある程度短期間の目標も併せて立てていく事がモチベーション維持のためにも重要です。当院では、減量の長期、短期目標を以下のように設定して指導させていただきます。

長期的減量目的:2年以上掛けて目標体重に到達する
短期的減量目的:3-6ヶ月を掛けて体重を3%減らす

②あなたの目標摂取カロリーを概算します。

高度ではない肥満症と診断された方(BMI 25-35) の目標摂取カロリーは以下の計算で算出できます。

一日摂取カロリー(Kcal) = 目標体重(Kg)x 25

例えば身長170cmの方ですと、目標体重は63.6kgですので、一日摂取カロリーは1590Kcalとなります。このカロリー摂取量をゴール達成まで守っていく形になります。
ちなみに、標準的な基礎代謝量と生活強度を考慮すると、この目標摂取カロリーはある程度マイナス収支になっています。例えば先ほどの170cmの方が55歳、男性、85kg、デスクワークが主体とすると、基礎代謝量1730Kcal、一日消費カロリー予想2422Kcalとなりますので、一日800Kcalほどのマイナスになります。これは、月3kgほど減量できる計算になります。基礎代謝の簡易計算は以下のような計算サイトを参照して下さい。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228736
また、生活強度を加味した一日消費カロリーは、デスクワーク主体の場合は基礎代謝x1.4で計算いただけます。

③毎日の体重、毎食の摂取カロリーを記録します。

肥満者の大きな行動的特徴として、体重を測る習慣が無かったり、体重を測りたがらないという事が挙げられます。従って、行動療法学的には、毎日決まったタイミングで(しかも複数回)体重を測って記録することが減量の第一歩となります。

当院で肥満指導させていただく場合、体重や食べたものの記載を推奨させていただいております。これによって、日常のどのような状況で減量困難となるような問題点があるかを把握していきます。また、食行動質問表を用いて食生活の問題点について洗い出すようにしていきます。
食行動質問表のサイト:http://pharmaceutical-jp.fujifilm.com/karoyaka/improve/questionlist.html

毎食の摂取カロリー量をきちんと把握することは、減量を続けていく上で毎日の明確な指標を作るため非常に大事です。以前は栄養士さんの栄養指導やカロリー本などでの学習が必要でしたが、現在ではスマホの栄養管理アプリなどで非常に簡単にカロリー摂取量の把握ができますので、原則としてスマホアプリの取得、活用をお勧めさせていただいております。アプリの基本的な使用法などにつきましては、遠慮なくスタッフにお問い合わせください。

ちなみに、当院では食事摂取において以下のルールをお勧めしています。

  • 一日摂取カロリーを目標値から大幅に落とさない(筋肉量が落ちる恐れがあるので)
  • 必ず3食摂取する。できれば3食ともタンパク質を含んだ食材を入れる (同上)
  • 夕食は常に軽めになるように意識する (夕食後、栄養分が脂肪へと変わりやすい)
  • 早食い防止のため、1口20-30噛みを徹底する
④適度な運動習慣をつけていきます。

肥満症診療ガイドラインでは、週5回以上、1回30−60分の運動(無理のない負荷で、ただし運動に集中した状態で)を勧めています。当院でもこれに沿って運動をお勧めさせていただきます。
運動には脂肪燃焼効果の強い有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)と、筋力増大効果の強いレジスタンス運動(筋トレなど)の2種類がありますが、ともに有酸素運動を中心に、適宜レジスタンス運動(体幹や下半身を中心に)を組み込んでいく事が推奨されています。
当院では運動を開始する前に原則としてメディカルチェックを行い、運動負荷を掛けても問題ないか確認の上、運動の方法につきお一人お一人と打ち合わせを行なってまいります。

具体的なルールは以下の通りです。

  • 通勤での徒歩、自転車使用時間は運動にカウントする。
  • 10分以下の運動を足し合わせて1日運動量としてカウント可能である。
  • レジスタンス運動は、体幹(体幹トレーニング、腹筋、背筋運動)と下半身(スクワットや足上げ運動)を推奨する。1日以上空けて繰り返すことを推奨する。
  • メディカルチェックとして、血圧測定、脳血管障害の有無(簡単な診察)、心電図検査(狭心症や心筋梗塞の有無)、関節の炎症(簡単な診察)を行う。血圧180/110以上の場合は先に降圧治療を開始する。脳血管障害や狭心症の疑いがある場合は精査を優先する。関節の炎症が疑われる場合、炎症が消失してから運動許可する)

4、薬物治療について

現在、以下のような薬剤は限定的な状況で保険診療下での使用が可能ですので、保険適応がある状況であり、食事・運動療法を行なっても効果が乏しい場合は適宜使用を検討させていただいております。

①マジンドール(サノレックス)
BMI≧35の高度肥満症の患者さんに保険使用可能です。向精神薬様作用がありますので、投与期間は3ヶ月以内に限られます。
②セチリスタット(オブリーン)
2型糖尿病と脂質異常症の両方をお持ちの肥満症の患者さんに保険使用可能です。膵臓から分泌される消化酵素であるリパーゼを阻害することで、脂肪の消化吸収効率を下げる効果があります。消化吸収できなかった脂肪分が便に混じることで、脂肪便や下痢を起こす事があります。
③GLPー1作動薬
膵臓からのインスリン分泌を促す薬効のため、2型糖尿病の治療薬として保険使用されておりますが、同時に食欲抑制作用があるため、保険外使用で肥満治療に使用されているのが現状です(米国では肥満症の適応もありますが、日本では適応されていません)。2型糖尿病をお持ちの肥満症の患者さんに対しては、適宜使用を検討させていただきます。
④SGLT2阻害薬
血液中の糖を尿から排泄させる効果のある薬で、こちらも2型糖尿病の治療薬として保険使用されております。糖を排出させるため、使用経験上平均2kg程度の減量効果を認めます。こちらも2型糖尿病をお持ちの肥満症の患者さんに対しては、適宜使用を検討させていただきます。

参考文献
(1) 肥満症診療ガイドライン2016
(2) Curioni CC et al. Int J Obers 2005;29:1168-74

診療時間
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15:30~18:30(受付 15:30~18:00)

※ 発熱・感染症外来は午前11:30~12:00となります(ともに完全予約制、8:30より受付開始)

休診日木曜、日曜、祝日

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